16回目で、昨今のシューゲイザーシーンで最も熱いのはAPOFだと書きました。しかし、熱いのは彼らだけではありません。時代が進むにつれサウンドも進化するもので、シューゲイザーという一つのジャンルの中でも、サウンドのアプローチも多岐に亘るようになりました。今回紹介するGuitarはそんな先進的なサウンドを詰め込んだ、「エレクトロシューゲイザー」なるバンドの代表的存在と言えるでしょう。
Guitarは、デジタル・ジョッキーことミハエル・ルックナーとアヤコ・アカシバによるネオ・シューゲイザー・ユニット。ドイツを拠点に活動をしているようです。1st「Sunkissed」しか聴いていませんが大まかな特徴としては、サウンドは、太陽光を表現したような輝かしいエレクトロサウンドとビートが挙げられます。眩しささえ憶えるサウンドは、まるで濃度の高い光の筋が、植物の芽にスポットライトを当てているかのようです。エレクトロニカとの組み合わせがシューゲイザーの輝かしい部分を引き出しており、音(ノイズも含む)が非常にクリアで綺麗です。ノイズは炭酸が弾けるあの感じによく似ています。巷では"キラキラシューゲイザー"などと言われていますが、まさにその通りです。
日本人がメンバーにいるというのに資料が非常に少ないためうまく書けない…(泣)。MySpaceでは「エレクトロニカ・ネオ・シューゲイザーブームの生みの親」などと書かれていますが、本当だとしたら称えるべき存在ですね。
1st 「Sunkissed」 2002年発表
Guitar - House Full of Time
※音量低いです
しかしマイブラにとても近い音楽性であるにもかかわらず、Vo/Gであるマイケル・フィーリックは、メディアに言われるまでマイブラやシューゲイザーといった言葉を知らなかったそうです。コレは驚きです。なにせこの手のバンドは、確信的にマイブラの影を追っているものだと思っていましたから。――そのため当然彼はマイブラのラブレスも聴いたことは無い。というわけで1stアルバム制作終了後に初めて聴いたみたところ、とても感動したそうです。「(マイブラは)僕がやりたいことと同じことをやっている!」 と。
そうなると彼の音楽のルーツが気になりますが、小さい頃に親から聴かされていたEL&PやPink Floydなどのプログレッシブロックや、NirvanaやSonic Youthなどのグランジ・オルタナティヴなどからの影響が大きいようです。プログレッシヴはともかく、グランジの影響というのはとても良く分かります。ノイジーで自由気ままに飛び交うギターサウンドや骨太な演奏などから彼のルーツを垣間見ることができ、「なるほどな」と納得してしまいます。
Amusement Parks On Fire - Blackout
この奇抜なバンド名は日本語の「セックス遊び」に由来します。米国育ちの日本人シンガー、ユキ・チクダテを中心に、ニューヨークを拠点に活動をしているこのバンドは、2ndアルバム「Citrus」で自分達の作るサウンドをドリームポップワールドと表現しており、彼女達のシューゲイザーの方向性が見えてきます。
このバンドは、なんといってもユキ・チクダテのスイートキャンディボイスが印象的。彼女の甘い声に、バックの甘いメロディと轟音ギターが重なり(ありきたりな表現ですが…)、まるでおとぎ話の世界でお菓子に囲まれている――そんなイメージです。さらにこのバンドの大きな特徴は、一般のポップミュージックのように非常に親しみやすいということ。マイナーな雰囲気は他のシューゲイザーバンドに比べると少なく、一般のリスナーの支持も獲得できそうなバンドです。
Asobi Seksu - Goodbye
Telescopesは、私自身が描いているシューゲイザーの理想像に最も近いバンドです。しかし、詳細は調べても全く分かりませんでした。彼らがどんな活躍をしたのかも不明だし、リリースした作品の詳細も良く分かりません。ただ分かっているのは、シューゲイザーらしいサウンドを鳴らしていたブームの一派であるということだけです。
まずヴォーカルですが、バンドサウンドに酔いしれるように歌う様というのは、正にシューゲイザーのそれなのではないでしょうか。あまりに気持ちよく歌っているため、目の焦点が合っていません(笑)。この気だるさは異常ですよ。そこに女性の透き通った美しいコーラスが加わることで、天にも昇る気持ちとでも言いましょうか。このボーカルだけでもかなりシューゲイズしています。
バックのサウンドに関しても浮遊感たっぷりの甘ったるいメロディや、目眩を起こしそうなサイケデリックなノイズ。そこらへんはマイブラと世界観が良く似ています。彼らの音楽を聴いていると正気を吸い取られているような感覚に陥り、聞き手も気だるい気分になってしまうことでしょう。
The Telescopes - Everso
知名度はRideやSlowdiveなどには及ばないものの、Catherine Wheelも間違いなくシューゲイザーブームの一端を担っていたバンドです。彼らもブームの中から出てきたのですが、その後も2000年まで活動していた数少ないバンドです。デビュー当初にリリースしたBlack Metallicはヒットし、注目を浴びた後に発表された1stアルバム「Ferment」は、彼らの代表作となっています。
彼らの楽曲は正統派ロックの流れを汲むものであり、癖のある曲展開が少ないため、シューゲイザーを良く知らない人にもおススメできます。流麗で耳障りのよい轟音とノイジーなギターソロが心地よく、低音で渋みの効いたヴォーカルがそこに溶け込む。それはまるで荒々しい川の流れを細部まで表現しているかのようです。時折魅せる、地面の下から噴き出してくるような緩急のついたサウンドもまた印象的であり、個人的に好きな部分だったりします。
因みにVo.ロブ・ディッキンソンは、HM/HRの大御所Iron MaidenのVo.ブルース・ディッキンソンの従兄弟だそうです。
1st 「Ferment」 1992年発表
Catherine Wheel - Black Metallic
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